唐突ですが、あなたがオリジナル曲を創る(あるいは創りたい)と考える理由は何でしょうか?
- 内に秘めたる想いを伝えたい。
- 音楽に助けられてきたから、今度は自分が助ける側に回りたい。
- 音楽をやるなら、作曲する能力も身に付けたい。・・・etc.
様々な理由があろうとは思いますが、いかなる理由があるにせよ目指すものは、『聴き手の心を揺さぶり、印象に残る楽曲を創ること』ではないかと思います。
私自身も、そのような楽曲を創りたいと思い、そのためにはどうしたらいいかを調べたり考えたりしつつ、聴き手の反応も勘案しながら、試行錯誤を続けて来た結果、おぼろげながらもこんな感じかしら?という制作のポイント(制作指針)を掴むに至っています。
大阪芸大通信教育部音楽学科には『作品制作特論』という講義があるのですが、そこでは、そういった楽曲とはどういったモノかを、イロイロな切り口から眺めて迫ってゆく内容で、大変有意義であったし、自身の掴んでいたポイントが間違いではなかったと自信を深めることにも繋がりました。
そこで、その講義の内容を絡めつつ、私なりの楽曲制作のポイント(制作指針)について、語ろうと思います。
音と人間の関係
音は、人間が知覚することにより空気の振動から情報に変化してゆきます。
ある音を聴いた時に、記憶の中に既にある音かどうかの照合をし、その音が何の情報であるかを理解します。
そして、その音の変化から、身の回りの状況がどのように変化し、どのような状態がもたらされるのかを判断するがゆえ、人間は音の変化に強い関心を持つのです。
また、その変化が大きいほど、より強い関心を持ちます。
一度聴いたことがある音は、それが何の情報であるかを認識しているので、少ない負担で安心して身を任せていることができます。
一方で、この安心感を破って、今までにない未知の情報が現れると、そこに強い関心を示し、さらに新たな情報取得により新鮮な歓びを感じる生き物でもあるのです。
ゆえに、聴き手の印象に残る楽曲にするためには、安心感や心地よさの中に、新鮮な歓びを与える『変化』を入れ込むことが必要なのです。
ただし、その『変化』が大きすぎたり、多すぎたりすると、安心感より不安感の方が先に立ってしまい、負の印象を与えることとなりますので、そのバランスには注意を払う必要があります。
回帰が重要(安心感を与えるために)
音楽には形式というものが存在します。
ポピュラー音楽の世界だと、
Aメロ⇒Bメロ⇒サビ⇒Bメロ⇒サビ
とか
Aメロ⇒Bメロ⇒サビ⇒Cメロ⇒サビ
みたいな。
こういった形式に基づいて楽曲を制作すると、構造が既知なので聴き手が展開を予想しやすく、かつ回帰することにより同じコード進行やメロディが繰り返し出てくるので、少ない負担で安心感を持って聴いてもらうことに役立ちます。
さらに、ある一定間隔で音が回帰すると、人はそこにリズムを感じ取ります。
旋律がリズムの上に乗っていると、それが複雑かつ長大なものであっても、受け入れやすくなるという効果も生まれます。
よって、回帰を上手く利用することにより、印象に残すためのベースとなる安心感を聴き手に与えることができるのです。
安心感の中の変化(新鮮な歓び)
回帰を上手く使って与えた安心感の中に、今までにない情報(変化)を入れ込むと、人はそこに強い関心を抱き、そして新鮮な歓びへと導かれ、印象に残ることになります。
聴き慣れたメロディラインの中に、今までにないハッとしたメロディが入っていたり、コード進行の意外な展開があったり、共感する内容の歌詞の中に、気付かなかった新しい知見を与えてくれる言葉やフレーズが入っていたり、途中でリズムが変わっていたりすると、印象に残りますよね。
ちなみに、ソングライター界隈では、こういった聴き手にハッとさせる『変化』を入れ込むことを『フックを入れる』と言います。
※フック=(聴き手の心を)引っ掛けさせる部分ってことです。
余談ですが・・・・
ポピュラー音楽のソングライター界隈で『ヒット曲の王道は、どこかで聴いたことがあるけどちょっと違う曲』というフレーズを耳にすることがあります。
これは、上述のことを端的に言い表しているのではないかと個人的には思っています。
もちろん、盗作を是とするフレーズではないことに留意してくださいませ。
盗作は、ダメ!絶対!!
言葉とメロディのハーモニー
いわゆる歌モノの曲は、言葉(言語)をメロディ(旋律)に乗せるという形式になっていますが、脳科学的な観点で言えば、言葉(言語)で左脳を メロディ(旋律)で右脳を同時に刺激することになります。
すなわち、言葉(言語)とメロディ(旋律)のハーモニーを上手く取ることにより、右脳左脳を同時に刺激し、その相乗効果により、人々の心により強い印象を与えることもでき得るのです。
ゆえに、メロディとその上に乗る言葉の関係性にも配慮する必要があるのではないかと思います。
言葉のイントネーションに従ったメロディラインに乗せるのか、あるいは敢えて異なったメロディラインに乗せるのか、その言葉をなぜこのメロディラインに乗せるのか等々、考え抜くことが必要なのではないかと思います。
1番大事なコト
ここまでイロイロと述べて来ましたが、1番大事だと思うのは、聴き手云々以前に作者自身の心を揺さぶる楽曲、愛せる楽曲になっているか?だと思います。
なぜなら、作者自身が愛せない作品を、他者である聴き手が愛せるはずないと思うからです。
このあたりは、このブログの中でもコトあるごとに語ってきたお話しかと思います。
(アートプランニング①の回、アートプランニング②の回、初めて作曲する前にの回等々)
感性は人それぞれ千差万別ですから、愛せる楽曲も人それぞれであり、それをどう具現化するかも人それぞれ千差万別であることが必然です。
すなわち、あなたにはあなたのやり方で、あなたの心を揺さぶる楽曲の具現化方法を自力で構築する必要があるということに他なりません。
(ゆえに、今までのお話しは敢えて具体的な話を避けて、抽象的な話を中心に記述するに留めました。)
- オリジナル曲を創ることを通して何をしたいのか?
- 既存の楽曲を聴いた時に、どういったトコロ(詞、メロディ、アレンジ、構成等々)が自分の心に刺さるのか?
を鑑みながら、自分なりのやり方を構築してゆくことが必要かと思います。
自分なりのやり方を模索してゆく中で、このブログに記した内容が少しでも参考になれば幸いです。
ということで、本日はこの辺で。
かなり長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
MASA
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