借用和音

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クラシック音楽の世界にずっと浸っていた人が、ポピュラー音楽の理論の話を聞き、混乱してる場面に出くわすことがままあります。
もちろん逆のケースもまた然りです。

私自身もポピュラー音楽の理論を中心に勉強してきたので、大学でクラシック音楽の理論(主に和声法)を講義で聴いた時に、結構混乱しました。

しかしながら、ひも解いて見ると、実は同じことを違う言葉や表現方法で説明していることが往々にしてあることに気付きました。

クラシック音楽の理論(和声法)で語られる『借用和音』もそのひとつで、実は以前にお話しした内容と結構被ってます。

そこで、自身の頭の整理も兼ねて、借用和音についてポピュラー音楽での言葉を対照しながらお話ししようと思います。

借用和音とは

ある調において一時的に他の調の和音を用いられることがあります。
これを借用和音と言い、代表的なモノととして副Ⅴ和音準固有和音があります。

副Ⅴ和音

スケール上のそれぞれの音を第1音としたスケールのちょうど第5音をルートとするコードを副Ⅴ和音と言います。

Key=Cの場合
Ⅱ:D 副Ⅴ和音:A or A7
Ⅲ:E 副Ⅴ和音:B or B7
Ⅳ:F 副Ⅴ和音:C or C7
Ⅴ:G 副Ⅴ和音:D or D7
Ⅵ:A 副Ⅴ和音:E or E7

副Ⅴ和音で7th(♭7)の音を有しているものは、ポピュラー音楽で言うトコロのセカンダリードミナントコードのことです。(ダイアトニックコード外のコードの回参照)

クラシック音楽の理論(和声法)では、特にⅤの副Ⅴ和音のことをドッペルドミナント(略称:DD)と呼び、サブドミナントの代理コードとして最も重要な副Ⅴ和音とされています。

Key=Cの場合
Ⅴ:Gの副Ⅴ和音:D or D7DD(ドッペルドミナント)
サブドミナントとして機能し、S⇒D:D(D7)⇒Gという流れで使わる。

副Ⅴ和音は、それぞれの基となった原調の和音に繋げる使い方になります。

Key=Cの場合
副Ⅴ和音:A or A7 ⇒ Ⅱm:Dm
副Ⅴ和音:B or B7 ⇒ Ⅲm:Em
副Ⅴ和音:C or C7 ⇒ Ⅳ:F
副Ⅴ和音:D or D7 ⇒ Ⅴ:G
副Ⅴ和音:E or E7 ⇒ Ⅵm:Am

四和音(7thを持つ和音)の副Ⅴ和音からの流れは、正にセカンダリードミナントコードからのドミナントモーションですね。(ダイアトニックコード外のコードの回参照)

一方、三和音(7thを持たない和音)の副Ⅴ和音はどうかと言うと、ポピュラー音楽の理論ではセカンダリードミナントコードとは言わない様です。
これは、三和音(7thを持たない和音)はトライトーン(三全音)を持たないので、そこからの流れがドミナントモーションにならないからだと考えられます。

しかしながら、トライトーンを持たない三和音のドミナントからトニックへの流れもドミナントモーションに準じた強い流れになる(ドミナントモーションの回参照)ので、ポピュラー音楽の理論では言及されていませんが、三和音の副Ⅴ和音からの流れもドミナントモーションに準じたものと考えて差し支えないということだと思います。

規則が厳しいクラシック音楽でOKなものは、ポピュラー音楽でも当然OKと考えて良いと思いますので、どしどし使いましょう~♪

準固有和音

長調において同主調(スケールの第1音が同じ)の短調の和音を借用して使用することが可能です。そして、その借用してくる短調の和音を準固有和音と言います。
これは、ポピュラー音楽で言うトコロのモーダルインターチェンジですね。(モーダルインターチェンジの回参照)

準固有和音の代表的な使い方は、Ⅱ、Ⅳ、Ⅵのコードを同主短調のⅡ、Ⅳ、Ⅵのコードにそれぞれ入れ替えるものです。

Key=Cの場合
Ⅱ:Dm7 ⇒ Dm7♭5
Ⅳ:FM7 ⇒ Fm7
Ⅵ:Am7 ⇒ A♭M7

いずれも、A♭(短6度音程:全音3.5個分)をコードトーンとして持っているので、ポピュラー音楽で言うトコロのサブドミナントマイナーコードおよびその代理コードになります。(モーダルインターチェンジの回参照)

なお、この準固有和音は、連続して使っても良いのですが、必ず原調のⅠかⅤの和音に繋げなければいけないというルールがあります。

その他にも、『ナポリのⅡ』とか『ドリアのⅣ』とかの特殊な借用和音もありますが、ここでは割愛します。

今後の作曲活動のご参考になれば幸いです。

それでは、本日はこの辺で。
最後までご覧いただきありがとうございました。

MASA

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