和声法は、音楽学科の必須科目の中で、単位取得が厳しいと言われている科目のひとつです。この科目の試験が通らずに卒業をあきらめた人が結構いたという話も聞いています。
私自身は何とか単位取得できましたが、確かにかなりの時間を費やして勉強しましたし、論理的に音楽を解析することがあまり得意でない(好きではない)人にはかなりの難関だろうなあ、とも感じました。
和声法とは
和声法の英訳は、Harmony Method。
つまりは、ハーモニーを創るための手法ということです。
複数のメロディラインを重ねてハーモニーを創る時に、心地よい響きとその流れを創るための手法あるいはルールと言って良いと思います。
まず、クラシック音楽の作曲家を目指す方は、この知識がないのはマズいと思います。
なぜなら、和声法は、数多くのクラシック楽曲を解析し、心地よい響きになる音の配置とその繋がり(連結)を法則化したものなのですから。
クラシック音楽の作曲家になりたい人は、頑張ってマスターしましょう。
そもそも、本学の作品制作クラシック音楽編の制作課題も、この知識をベースに制作したものでないと合格点はいただけないと思います。
一方、ポピュラー系の音楽を作曲する上では・・・・・、
まあ知らんでもできますね。
私自身も知らんでもそれなりに曲を書いて来ましたし、以前に音大出身の知人(シンガーソングライター)にソングライターとして和声法勉強した方がいいか?を相談した時にも、むしろ知らない方が良いとさえ言われましたので・・・・・(^-^;
ちなみに、本学では作品制作ポピュラー音楽編にて、和声の規則に縛られない作編曲方法も学習できます。
和声法の利点
そんな和声法ですが、ポピュラー音楽の創作をする私にとって、無駄だったか?と問われると無駄ではなかったと思っています。
端的に言えば、ポピュラー音楽にも用いられる音楽理論を理解するのにここで得た知識が結構役立ったと感じています。
今まで疑問に思っていた点が氷解し、腹に落ちるという経験を何度かしました。
また、日本のポピュラー音楽の作曲家の中には、クラシック音楽(西洋音楽)の作曲理論を学んだ方も多数いらっしゃいますから、こういった知識を持っていることは有効であることはご理解いただけるかと思います。
私が感じた具体的な利点を、以下に書き出してみます。
和声法のルールに則って音符を配置すれば、それなりに心地よい響きを得ることができる。
先に述べたように、心地よい響きになる音楽を解析して、それをルール化したものが和声法ですので、それに則って行けば、ほぼ間違いなく心地よい響きになるのはまあ当たり前ちゃ当たり前なんですよね。
ストリングスや管楽器、合唱、ハモリなどの心地よいハーモニーを作編曲する必要がある時には、この知識は役に立つと思います。
作曲の展開に困った時に、和声法のルールを当てはめて検討することで打開策が見える可能性が高い。
例えば、次のようなコード進行のルール。
古典的な和声学においては、和音記号ごとに可能なコード進行を考えると、次のようになるります。
- I は、すべての三和音とII7、V7、V9に進行することができる。
- II は、V (7.9) にのみ進行することができる。
- T(トニック)のIIIは、IかVI→III→IVという進行の中でのみ使われる。
- D(ドミナント)のIIIは、TのIかVIに進行する。
- IVは、I、II (7) 、V (7.9) に進行する。
- V (7) は、TのIかVIに進行する。
- TのVIは、Iを除くすべての三和音とII7、V7、V9に進行することができる。
- VIIは、IIIに進行する。
もちろん、これらは原則であり、例外が多数存在しております。
ここでは書かれていないⅤ⇒Ⅳの進行なんて、ビートルズをはじめとしてポピュラー音楽では多用されていますよね。
ですので、あくまでもコード進行に迷った時の引き出しの一つとしてこの規則を知っていると便利だなあという感覚です。
クラシック音楽の作曲手法を垣間見た。
今まで、クラシック音楽の作曲には全く興味がなかったので、どのような感じで創ればよいか皆目見当が付きませんでした。
が、和声法を学ぶことにより、その基本的なやり方を知ることができ、これはこれで主に創作面での音楽的視野を拡げるのに役立ったと思います。
お蔭で、クラシック音楽を作曲しようと思えば、まあなんとかできるレベルにはなったかと思います。
スケール上の各音の役割を知った。
あくまでも西洋音楽の中での話ですが、スケール上の各音の役割を知ることができ、音楽理論の理解の助けになりました。
例えば、
- 第1音(主音)と第5音(属音)は、自然倍音上にあり、ほぼ同じ役割を持つので、一方を省略可能である。なお、和声法では第5音のみ省略可です。
この知識を用いれば、例えばⅠM7の代理コードとしてⅢm7が使えるのは、ルート音を省略できるからだと理解することができるようになります。 - 和声法は3度(6度)音程の響きが美しいという前提で成り立っている。
よって、その音程を中心とした旋律にするとクラシック音楽っぽくなる。 - 第7音は導音と名付けられ、第1音(主音)に流れる力の強い音である。
ポピュラー音楽におけるコード進行の唯一のルールとも言われているドミナントモーションの推進力は、トライトーン(増四度音程)の解決および5度進行(強進行)だけではなく、導音から主音へ流れる力も作用していると理解できます。
例えば、G7⇒Cでは、G7の第3音であるB(シ)が、Cの第1音であるC(ド)に流れる力もドミナントモーションの推進力のひとつと説明が付くようになるわけです。
(詳細は、ドミナント・モーションの回参照)
などなど
また、この知識は音楽理論だけでなく、メロディの流れを創る時、さらにそのメロディラインとコードとの関係を考える上でも大いに役に立つ知識でもあると思っています。
おまけ:譜面がパッと読めるようになる。
これは私特有の利点ですね(笑)
DTMerにはありがちなのですが、譜面を使う必要が全くなかったので、ずっ~と苦手で、パッと見で読むことができませんでした。
しかしながら、和声法の課題で散々譜面を書かされたお蔭で、ト音記号のみならず、へ音記号の譜面までパッと見て、そのおたまじゃくしがなんの音かを判断できるようになりました。
音大に入ると、教官と課題作品のやり取りを行う場合、譜面がメインになるので、他の科目でももちろんそれなりに書かされましたが、書かされる量は、私の場合、和声法の課題がダントツに多かったので、この力が付いたのは和声法の課題のお蔭だと思ってます。
まあ、これは別に和声法の利点というわけではないですケドね・・・(笑)
書き出してみると、イロイロ出てきますね。
長くなるので、ここら辺にしときますが・・・・( *´艸`)
おわりに
イロイロと述べて来ましたが、こういった利点があるから、ポピュラー系の音楽創作を目指す人は、ぜひ和声法をマスターしてください・・・・、と言いたいわけではありません。
あくまでも知っていて損はないですよってことです。
まあ、世の中知識を持っていて損なことはどんな分野であろうとありませんけどね(笑)
先に述べた様に、単位取得にはかなりの労力と時間を要するので、それに見合った利益だったかと言えば、それには疑問符が付きます。
ここで記載したことは、自身が修得して利益があったと思うことの備忘録でもあります。
人間、ガンバって修得したことは有益であったと考えたい生き物ですからね(笑)
ただ、その内容が、参考になったり、和声法を勉強するモチベーションのひとつにでもなれば幸いです。
そして、音楽大学に入ったからには和声法くらいマスターしろや・・・という大学側の想いも今では理解できますゆえ、音大卒の肩書が欲しいなら、まあ四の五の言わずに頑張りましょう。
健闘を祈ります(一人一)
ということで本日はこの辺で。
最後までご覧いただきありがとうございました。
それでは、また。
MASA
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