本日は、大学の講義を通して初めて知り、自身の音楽観に新しい視点をもたらしてくれた、アクースマティック・ミュージックについてお話しします。
アクースマティック・ミュージックとは?
アクースマティック・ミュージックとは、電子音響音楽とも呼ばれ、様々な電子音響機器で制作され、最終的に音声メディアに定着することで完成し、それを再生しスピーカーでただ聴くことによってのみ体験できる芸術です。
様々な音を録音し、それを切り貼りして制作するミュージック・コンクレートの概念を拡張したものとも言われております。
音楽は、一般的にメロディ、リズム、ハーモニーの3要素から成立すると言われており、大学の楽典の教科書にもそのように記載されております。
しかしながら、アクースマティック・ミュージックはこの3要素(楽の音)がない、あるいは不足している音楽です。
クラシック音楽は、和声法や対位法などの規則に合わせて、忠実に音を配置して創ることを求められますが、アクースマティック・ミュージックにはルールが一切ありません。
作曲者のノウハウや勘で創ってゆく音楽で、塩梅の音楽と言っても良いとのことでした。
ルールがないから間違いもない。それゆえ、取っ付きやすく創作の世界に足を踏み入れやすい音楽でもあります。
指導教官曰く、『こんなに簡単に音楽は創れるんだということをそれぞれのフィールドに持ち帰って広めて欲しい。』とのことでした。
そもそも『アクースマティック』という言葉は、ピタゴラスが弟子に講義するときに幕を張って身を隠し、声だけに集中させたという故事(幕の外にいる弟子が『アクースマティコイ』と呼ばれた)に由来しているとのことです。
作品制作のコンピュータ音楽編では、このアクースマティック・ミュージックを中心に勉強し、課題作品を制作します。
この講義&実習を通じて、様々なアクースマティック・ミュージックを体験し、『音楽っていうのは本当に自由でいいんだ。』ということを再認識させていただきましたし、音を使って想いを表現する手法の裾野の広さを痛感しました。
アクースマティック・ミュージックの制作方法
まず、自然音、環境音、音声などを録音するなり、シンセサイザーを用いて創るなりして、基となる音(素材音)を創ります。
そして、DAW(Digital Audio Workstation)のエディット、ミックス、エフェクト機能を駆使して、それらの素材音から多様な表情を創り出して組み合わせ、音楽とします。
実例として、私が課題として提出したモノを以下に貼っておきます。
大学から提示された複数ある音声ファイルから一つだけ選んで、それのみを素材音として用いて、様々な表情を創り、組み合わせ作品とするという課題に対して提出した作品となります。
作品タイトル:かくれんぼ
『リン』という鈴の音ひとつだけを素材音として用い、それを基に以下の機能を駆使して様々な表情を創って組み合わせ、作品としました。
音色加工:ピッチシフト、リヴァース、タイムストレッチ、ループ
エフェクト:リバーブ、ディレイ、トレモロ、EQ、リミッター
オートメーション:PAN、ボリューム大小、ディレイ度合
いかがでしたでしょうか?
人によっては、
『はぁ?これ曲なの???』
って思われたかもしれませんね。
確かにクラシック音楽やポピュラー音楽で言うトコロの曲とは一線を画していると言えるかも知れません。
ですが、何かを感じ取れませんでしたでしょうか?
どなたかが何かを感じ取っていただけたとするなら、これは、アートプランニングの回で述べたようにアートと定義でき、音の芸術ということになるのではないかと思います。
ちなみに、この作品に対する指導教官からのコメントは以下です。
『音楽経験が豊富なMASAさんだからこその綿密なこだわりが光る作品でした。「かくれんぼ」の余韻、余白のさじ加減が絶妙で素敵でした。音楽における「音のない部分の重要性」を意識させられます。(以下、省略)』
ご興味を持たれたようならば、アクースマティック・ミュージックをイロイロと聴いてみてくださいませ。
あなたの音楽観がいい意味で壊され、新たな音楽観の構築に寄与すると思いますゆえ。
ということで、本日はこれにて
最後までご覧いただきありがとうございました。
それでは、また。
MASA
コメント